非認知能力と言語力のつながり

非認知能力は、学力(=認知能力)以外の能力のことを指す言葉です。この言葉は、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームス・ヘックマン教授の著書『幼児教育の経済学』で広く世の中に知られるようになりました。

簡単に紹介すると「忍耐力、集中力、自制力、協調性、社交性などの「非認知能力」が高いことが社会で成功して生きていくための要素として大きいことを、40年にわたる追跡調査で論証した」のが、この本の内容です。

また、非認知能力の有無は、賃金や就労、大学進学率、10代の妊娠、犯罪率などに大きく影響していること。さらに、非認知能力の1つである「自制力」が高かった子どもは低かった子どもに比べ、大人になったときに「社会的地位」「所得」「健康度」のすべてが高かったという調査結果も論証しています。

つまり、非認知能力は学力(=認知能力)にも大きく影響し、つながっているわけです。

この著書をきっかけに、様々な幼児教室が「非認知能力」を謳い文句に掲げるようになりました。ダンス · 合気道 · 絵画・工作 · プログラミング · 水泳 · 楽器・リトミック · 総合型スポーツ · 料理・自然体験・ボーイスカウトなどなど…。

ところが、忍耐力、集中力、自制力、協調性、社交性などの「非認知能力」は、イメージや感覚で理解するものではなく自分以外の他者の存在を認知する「他者意識」と言語力による「論理的思考」のよってはじめて理解できるモノです。

忍耐力=犬の「待て」、ではないのです。ましてや、集中力=ただ夢中になる、自制力=怒られるから出しゃばらない、協調性=楽しいから仲間と遊ぶ、といったモノでも無いのです。

子どもの「楽しい」を魅力に掲げる習い事は、人間の脳の「つながり」「有能性(できる感)」「自発性」といった『心の三大欲求』を満たしてくれます。これは子どもの心と身体の成長にとって大切なことです。

でも、子どもの非認知能力を伸ばすための論理的思考を可能にする「言語処理能力と言語化能力」を身につける要素がどこにもありません。

どんな習い事でも、子どもの論理的思考の有無が、その上達や習熟度に差を生むことは「言語力を身につける意味」でも書かせていただきました。

子どもは、家庭という最小単位のコミュニティから幼稚園・保育園、そして小学校へと少しずつ大きな「社会」に触れながら成長していきます。様々な習い事もコミュニティのひとつで子どもにとっての刺激となります。こうした経験を通して、子どもは色々な事に興味を持ち好奇心を抱くようになります。好奇心を持つということは、子どもはそのことについては「知らない」ということです。だから、好奇心の先の「知らない」を「知りたい」から興味を持つわけです。これが「まなび」です。ところが、言語力が低いというだけで折角の「まなび」が、子どもにとって十分に満足できる「まなび」にはならないのです。わかるとうれしい、できると好きになる。だから、もっともっと自分からまなぶ子になる。そのためには言語力による論理的思考を幼児期にこそ伸ばして非認知能力だけでなく認知能力も大きく育ててあげて欲しいのです。

樹木にたとえると認知能力は「葉」や「実」といった目に見える部分、非認知能力は目に見えない「根」の部分、そして、「葉」や「実」と「根」をつないているのが「幹」や「枝」、これが言語力です。

みらい塾(みらい学習教室)