英語と向き合う2
前回のブログ「英語と向き合う1」では、「英語の音」つまり「耳をきたえる」ことが、英語習得の秘訣です。と、リーパー・すみ子著『英語が話せない子どものための英語習得プログラム・ライミング編』でご紹介しました。
『英語が話せない子どものための英語習得プログラム』は、2冊で完結する英語習得プログラムの本です。前回「~1」で紹介した『ライミング編』では「英語の音」を、そして今回の「~2」で紹介する『ガイデッド・リーディング編』では、「読む力」について紹介されています。そして、このガイデット・リーディングは英語に限らず「言語を学ぶ」ということはどういうことかを知る上でとても興味深い著作です。
『ガイデッド・リーディング編』は、実は日本で生活する日本人の小学生を対象に書かれています。つまり英語習得を日本で生活するなかでどうすればよいかを「手法」と「目的」の両面から平易な言葉で紹介されている希少なモノです。とくにお子さまに英語を習わせたいと考えている方には、是非お勧めしたい一冊です。
さて、言語習得の肝は「論理的に考える力」を付けさせるところにあります。なぜなら、考えながら読めなければ、とうてい理解に及ばず知識すら身につかないないからです。
たとえ英語がペラペラに喋れたとしても、その中身がペラッペラでは目も当てられません。これは日本語でも同じことです。
「わかる」と「わかったつもり」には、大きな隔たりがあります。「考えながら読む力=論理力」は、言語の習得過程で身につけるべき必須スキルなのですが、私たち親世代から今の子ども世代の教育に至るまで、日本における日本語教育では、この「論理力」の部分が完全に抜け落ち、学校などの教育現場では、教えることすら放棄しているようにも思えます。こういった環境で、幼児期に英語を子どもに学ばせることへの警鐘を昨今多く目にするようになりました。多くは、「英語も日本語も、何を言っているか分からない状態」というモノです。
そのうえで『ガイデッド・リーディング編』を紹介するのには、大きな理由があります。それは英語を通じて言語教育がどういうモノなのかを改めて知ることができる本だからです。著者は、「読む能力」は、「文字が読める能力」とは違います。と断言したうえで『文字が読めても、本を読むことができない人はたくさんいます。本を読む能力とは(中略)最後には自分なりの考えを持つこと。そして、その自分なりの考えを、自分の言葉で表現すること。ここに至ってやっと、「読む能力が習得できた」といえるのです。とし、その取り組みを紹介しています。しかもその目的を明確に「考えながら読む力=論理力」においているところです。そして、アメリカでは「ガイデット・リーディング」を幼稚園から始めているというのです。それほど真剣に国語教育を行っているのがアメリカであるということを知るだけでも価値ある一冊だと私は思います。
ここでブログタイトルの「英語と向き合う」ために、私たちはいったい何が必要なのかを、『ガイデッド・リーディング編』から抽出したいと思います。
著者のリーパー・すみ子女史は、「日本の小学生に合った形で提案」としながら以下の方法を提示しています。(これぞバイリンガル教育の基礎だと私は感じます。)
① 題名やイラスト(絵)を解読の手段として使う。
② 読んでゆくうちに、who(だれが)、when(いつ)、where(どこで)、what(なにを)、why(なぜ)、how(どのように)したのかを、考えながら読む。
この2つを意識して英語の絵本を「読む」ことで、
「物語を分析する力を養える。」→「要点をつまんでゆく習慣がつく。」→「頭の中でまとめながら、読んでいくようになる。」つまり論理的に読むようになり「わからない単語は、前後の文章やイラストから想像しながら読むようになる。」と結んでいます。
リーパー・すみ子さんの「わからない単語は、(子ども自身が)想像しながら読むようになる。」と紹介されている子どもの変化に「自学自習」への大きな可能性を私は感じます。英語絵本も数冊紹介されているだけでなく、絵本を教材としてどのように使えばよいかのガイダンスも細かく紹介されています。著者のこうした手法は、十分家庭でも実践できるものですし、日本における英語教育への価値ある提案ではないかと思います。そしていわゆる英語塾に子どもを通わせることが、必要な英語教育なのかとの疑問も湧いてきます。皆さんは如何ですか?
ご自宅にある絵本の中に、一冊でも英語の絵本を忍ばせて読んであげる。その時、「英語の絵本だよぉ~。」と期待感たっぷりに、お母さんが英語で読んであげてください。下手で結構。堂々と読んで上げて下さい。そして、イラストを指して「Who?、これは誰かな?」と聞いてあげる。この繰り返しがとても重要で、初めからCDなどで済ませないで下さい。
私の拙い人生経験の中で、国際結婚をしている夫婦を十数組ほど知っていますが、両親が日本語を話す家庭では、子どもは外国語を話さなくなります。そして日本語しか話せなくなります。もっと言えば、外国語を話したがりません。逆に、日本語を話せないもしくは話さない親、家族がいる家庭では、自然と子どもは日本語と日本語以外のバイリンガルになっています。
ですので、お子さまに英語が使えるようになって欲しいのであれば、親が使うところを子どもに示すことが一番に必要です。子どもに強制するのではなく、親がやることを子どもはまねて覚えます。ある意味とても残酷な現実なのですが、あえて逆手にとることで効果は絶大です。しかし手段においては「正しい」ことが望ましいので、是非この『ガイデッド・リーディング編』と『ライミング編』を参考ししてみては如何でしょうか?
そして決して忘れてはいけないことは、日本において生活する以上、子どもが英語を使うことができても、思考言語は日本語であるということです。キチンと親の方で切替を行って、遊びとして英語に馴染ませてあげることが、長い目でみて良い結果を期待できることを多くの研究結果が示しているのも事実です。この辺りは別のブログで…。
教育には、お金がかかります。私たち夫婦も同じです。子どもが幼いということは、親もまだ若く収入も決して多くはありません。
そこで、私たち夫婦が20年前、どのように息子の英語教育に向き合ったかを最後にご紹介します。
実は、夫婦で息子への英語教育を真剣に考えたとき、私は息子と「本だけは好きなモノをたとえ漫画であってもお小遣いとは別に何でも買ってあげる。」という「男の約束」をしました。なぜなら、そのころ外資系企業に勤めていた私は、バイリンガルの先輩から「日本語が正しくないと英語はもっと酷くなるぞ」と釘を刺されていたので、息子への英語教育は、「英語の音」だけは教室で外国人講師に接することで覚えさせ、強化すべきは国語力だと信じきっていました。そこで、月6千円(20年前)の教室代と本を買い与えることは、私の少ない収入で何とかなると考え抜いた結論として、「男の約束」を4歳の息子としました。大学を卒業して社会人となった息子に聞くと、この「男の約束」のことはハッキリと覚えていましたし、とても感謝していました。
お金を掛けない代わりに、私は息子が読んでいる本の内容をことあるごとに「聞いてあげる」ことに傾注しました。そうすることで、文字を追うだけでなく、内容を考えて理解するようになりました。息子の話に目を丸くする祖父母の様子に調子づく息子にハナタカな私は、苦肉の策だった「男の約束」が良い成果につながっていることにホッとしながら、何よりも息子が何に興味を持っているのかを知ることで、子どもの成長も知ることになったわけです。漫画でも本でも、その内容を他人に伝えるためには、内容を整理して話さなければ、話す息子自身も、もどかしくなります。何回も繰り返す中でグングン力をつけていってくれました。
「使わないと忘れる」のは、なにも英語に限ったことではないので、私はよく息子と駅前のゲームセンターに通いました。大音量で流れるBGMの中でなら、周囲を気にすることなく息子はもちろん私も英語を使えるからです。会話は英語のみ、会話で英語が続かなかったらその日はお終いというルールの「遊び」で英語を使う機会を持ちました。男の子はゲームセンター大好きですので、すべてに抵抗感はなかったようです。英語は大きな声で使うアクセントの言語です。ゲームセンターという場所柄、いささか教育上問題視されるとバツが悪いのですが、ここでのエクササイズは英語教室での積極さにつながったのではないかと振り返って思うところがあります。いずれにせよ、20年前のことなので大目に見て下さい。
一方で母親は、教室の宿題のあと、教材を自宅で流しながら息子と遊んでいました。今でも絵本の読み聞かせを専任講師として保育園でボランティア活動していますが、元々根気強く一つのことに取り組める性格の妻は、息子が飽きるまでいつまでもライミング・ソングで遊んでくれていました。
英語の「正しい音」は、私たちでは息子に教えてあげられません。下手な鳴き方を覚えた鶯は、生涯上手に鳴くことはありません。ですので、この部分は外国人講師にお願いするしかありません。そのための英語教室でした。当時はまだ、チャットがインターネットの主流という時代です。YouTubeのような良質で豊富な動画の配信サービスはありませんでしが、いまは違います。ライミングで検索すれば、無料でいくらでも良質な動画を観ることができます。イケメンや美人の外国人講師が登場する動画も多くあります。
実験的に、手探りで英語と息子に向き合ったのは20年前ですが、その期間は、1年もありませんでした。それ以降は、まったくの彼の自学自習によります。そしていまの彼は英語圏なら一人で旅を楽しめる大人になっています。
数年前、家族でイギリスに行ったとき、私が聞き取れなかった英語を息子が訳して、語彙力では勝る私が英語で答えると、隣で息子が「His English will be my study.」と場を和ますシーンがありました。私は、ふとあの日のゲームセンターを想起し彼の心遣いと成長を嬉しく感じました。英国紳士はちょっと訝しげに「Is he your son? 」と手振りを交えて訊いてきました。私は最初の質問が聞き取れなかった恥ずかしさで小さく「Yes」と答え、用事を済ませようとしたそのとき「Yes, He is our son.」ときょうこ先生が元気に割って入ってきました。虚を突かれた英国紳士は、突然現れた童顔の日本人女性が母親だと理解すると目を丸くしてただただ笑顔を返すしかありません。こんな感じで、次はどの国に行くのでしょう。
長くなりました。最後に、人生100年といわれる時代になりました。色々な意見がありますが、教育に費やせる期間は、子どもが10代までの間です。しかも、子どもと家族が一緒に取り組める学びの期間はとても短いのです。当教室で、子どもと一緒に「論理エンジン」を学びながら、プラスαの学びをお話しませんか。
みらい学習教室(東大和中央)代表 杉本和功
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